卵子凍結は、将来に備えて妊娠力の高い時期の卵子を保存する選択肢として、今注目を集めています。今回は、卵子凍結の基本的な流れや方法について、医師の視点からわかりやすくお伝えします。
もともと卵子凍結は、がん治療などによって妊娠力が低下する可能性がある患者さんの治療前に、卵子や卵巣を凍結保存しておくことで治療後の生殖能力を維持することを目的に行われてきました(医学的適応による卵子凍結)。。最近では、健康な未婚女性が将来の妊娠に備えて凍結するケースも増えてきています。これは「社会的適応による卵子凍結」と呼ばれています。
現在では、急速ガラス化法という凍結技術が確立され、凍結した卵子の融解後の生存率は90%を超えるようになりました。融解後の卵子の生存率がそのまま出産率になる訳ではありませんが、凍結・保存技術の進歩により、凍結卵子を使って出産に至る確率は、以前より確実に高まっています。
卵子を採取する際には、排卵誘発剤を使用して卵巣を刺激し、複数の卵子を育ててから採卵します。採卵は腟から超音波で卵巣を確認しながら針を刺して卵子を吸引する方法で行われます。採取された卵子は凍結保護剤を使用し、マイナス196℃の液体窒素で凍結・保存されます。
実際に採卵した卵子は「成熟卵」「未成熟卵」「変性卵」に分類され、凍結保存が可能なのは成熟卵です。35歳以下では約90%が成熟卵と言われていますが、年齢が上がるにつれて変性卵の割合が増え、妊娠率にも影響します。
成熟卵子:凍結保管可能
35歳以下の場合、採取された卵子の90%程度が成熟卵と予想されます。個人差があり、未成熟卵も成熟卵と同様に多く取れてしまう方もいます。

未成熟卵子:採卵後、数時間で成熟卵子になれば凍結保管が可能
採卵した卵子の10~15%程度が未成熟卵子です。

変性卵子:凍結保管不可
受精能のない変性した卵子です。採卵した卵子の5%以下ですが、38歳を越えると変性卵の割合が著明に増加します。

卵子凍結による妊娠確率は、30歳以下で卵子10個あたり約80%、35〜37歳で約53%、40歳以上になると20%以下にまで下がります。そのため、できるだけ若いうちに10〜20個以上を凍結保存しておくことが望ましいとされています。
卵子凍結は通常、不妊治療クリニックで以下のような流れで行われます。
初診・検査(血液・超音波・ホルモン値など)
排卵誘発(注射や内服薬で卵胞を育てる)
採卵(腟から針で卵胞を吸引)
卵子凍結・保存
卵子凍結の費用
卵子凍結の場合の費用は、グレイス杉山クリニックSHIBUYAの場合、採卵・凍結費用は『麻酔なし、成熟卵9個を凍結・保管した場合』に約40万円。このほか保管であれば3.5万円~/年です。(Grace Bankでの保管の場合
加齢とともに卵子の質は低下し、妊娠力も下がっていきます。卵子の老化は外見の変化と同様に避けられない自然な現象です。だからこそ、将来の不妊リスクに備える手段として卵子凍結は注目されています。
東京都では、2023年度から18〜39歳の女性を対象に卵子凍結費用への助成制度を行っており最大24万円(令和8年度 )の補助が受けられます。
ご自身の状況に合った選択をするために「AMH検査」で現在の状態を可視化してみるのはいかがでしょうか。AMH検査は「卵巣に残っている卵子の数を測る」検査とも言われています。いま妊娠を考えている、または将来妊娠を考えているという方は、将来の妊娠に備える選択肢の一つとして、卵子凍結について家族やパートナーと話し合ってみてはいかがでしょう。
監修
名倉 優子 なぐら ゆうこ
日本産科婦人科学会専門医